秋に笑う野菜

そういえばと、紅葉ばかり気になっていて忘れがちなのがハロウィーンである。

日本でハロウィーンというと、クリスマスにくらべて数段は格下の外来行事で、気にしない人はまったく気にしない。しかし近年、都心部を中心にハロウィーンの市場規模がおどろくほど伸びているという。額面でいうと、すでにホワイトデーを超えバレンタインデーにせまる勢いだとか。

今季はとくに仮装グッズが人気のようだが、盛り上がりの影響は小売業だけにとどまらない。

毎日新聞の記事によると、お台場にあるホテル日航東京では、去年からハロウィーン期間限定の宿泊プランを用意していて、問い合わせの件数がふえているらしい。お部屋の装いが特別仕様だったり、仮装したホテルスタッフが夕食を運んできてくれたりと、にぎやかな夜を演出してくれるようである。紅葉を売りにできない街場のホテルにとっては願ってもない商機だろう。

都会ならではのパーティ感とは無縁の田舎でも、紅葉にまじってそれなりのハロウィーン気分が味わえる。巨大カボチャの重さくらべや、それらをくりぬいて作るジャック・オ・ランタンの体験教室は、どこの収穫祭でも定番になっている。

この種のカボチャは、もともと牛の飼料用につくられているため、人間の食用には向かないらしい。ところが実際に包丁で果肉を切り出してみると、これがみずみずしくてけっこうおいしそうに見える。生でかじりつきたいくらいである。こまった。

そんな人たちの要望にこたえて、というわけでもないけれど、「山人」の夕食では、夏から秋にかけて“生で食べられるカボチャ”を提供している。見た目はタマネギのかたちをしたグレープフルーツで、そのあざやかな黄色が印象的な、コリンキーという名の野菜である。

いちおうカボチャではあるらしい。盛りつけをみて一発で「コリンキー」とわかる人は少なく、宿泊者からもめずらしがられる。

認知度が低いのは、21世紀になってから登場したあたらしい野菜だからというのがあるだろう。味らしい味がないかわりにクセもないので、さまざまな料理に使える。きっかけひとつでブームになりそうな予感がする。

「山人」ではスティック状に切って、ポリポリと手づかみで食べてもらっている。なんといっても彩りがよく、にんじんやキュウリとならべるだけで赤、青、黄色の信号色になる。

といっても、じゃあハロウィーンだし、皮も黄色いしという理由で、コリンキーをくりぬいて小さなジャック・オ・ランタンをつくったりはしない。手のひらサイズなので、取っ手をつければランタンとして持ち歩くには丁度いいが、まずこれは食卓にならべてみて、その色合いのさわやかさを堪能してもらいたいところ。

ハロウィーン用の飾りは、「山人」でもちゃんと用意している。地元の農家から譲り受けてきた巨大カボチャを、寒空の下でスタッフがていねいに彫刻した。

夜になり火を灯せば、できあがった表情の完成度が際立つ。紅葉だけじゃあないんだぜと、秋の夜長に不敵な笑みをうかべている。

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