山人はなぜボルボなのか

ボルボの創立者のひとりアッサール・ガブリエルソンは、最初の一台をつくるとき、エンジニアたちにこういった。「デザイナーのためのクルマではない、つねに乗る人のことを考えて造るように」。

乗る人のことを考えるとはどういうことだろう。クルマは、単に格好良ければいいわけでも、上質であればいいわけでもない。クルマを考えたとき、最も大切なのは人間であり、その生命であるという当たり前のことに世界が気づくまで、意外なほど長い時間を必要とした。

しかしガブリエルソンは、80年前にボルボのスタート地点に立ったときからそのことを知っていた。

「クルマは人によって運転され、使用される。したがって、ボルボの設計の基本は、常に安全でなければならない」

ボルボは、すぐれた品質とともに、高い安全性によって広く世界に知られる自動車メーカーのひとつである。会社独自の事故調査隊を持ち、そこから得たデータを安全装備の開発に活かす。ボルボが産みだした数々の安全装置の中には、三点式シートベルト(現在の標準的なシートベルト)に代表されるような、後に各国の法律により義務付けられたものも少なくないが、自動車業界における貢献はそれだけにとどまらない。

エンジン始動時から一酸化炭素と炭化水素を約98%も除去する排ガス浄化装置を自社の乗用車に搭載したのが、いまから40年近く前。以後、世界中のほぼすべてのガソリンエンジンに、ボルボが開発したこのセンサーが採用されたことは、自動車と環境の歴史における隠れた偉業であろう。そんな環境面での強みを裏付けるように、同社のクルマは、車両の85%にリサイクル可能な素材を使用し、工場では水力発電を中心とした環境負荷の少ないエネルギーを効率的に利用することで、排気のクリーンさにおいても世界トップの座を維持しているという。地球環境への長期的な責任を考えずに行動することを恥とする北欧男児のスピリッツは、伊達じゃない。

持続可能な社会を後世に残すという、私たち全員にあたえられた重すぎる課題は、私たちひとりひとりが、ひとつひとつの持続不可能性を排除するということによってしか実現しえない。山人がボルボを選択する理由はそれだけでも十分に思えるが、雪国ならではの理由もある。

ボルボ車の上質さはスカンジナビアン・ラグジュアリーと称され、寒い国で生まれたクルマならではの細やかな配慮が行き届いている。インテリアに用いられたウッドパネルが自然のぬくもりを感じさせ、パネルのスイッチ類は、手袋をしたままでも操作ができるよう大きく造られている。アウターを着た状態でもゆったり座れる幅広シートはもちろんのこと、そのシートを暖めてくれるシートヒーターですら、70年代後半にはすでに搭載されていた。なるほど寒い国のクルマには、寒さを知り尽くしたつくり手たちが存在するのである。

世界屈指の安全思想を持ち、環境に対する責任に真正面から向き合い、寒い土地柄への配慮に長けたボルボ。さて、山人がなぜボルボを選ぶのか、その理由をこれ以上説明する必要があるだろうか。

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