春の皿には苦みを盛れ

日当たりのよい斜面では雪がすがたを消し、薄黄緑色のばっけが次々と咲きはじめる。がくが開き、我先にと競うように早い春を告げる。

ばっけをご存知でない方は、春を告げるものと聞いて、何を思い浮かべるだろう。ばっけは主に東北で使われる方言で、ふきのとうのことである。調べてみると、アイヌ語で“子供を背負う”という意味の「パッカイ」や“春”を意味する「タイギャ」という言葉が変化したなど諸説あって、同じ岩手県内でも「ばっけ」や「ばっきゃ」と呼ぶなど、地域が異なると呼び名も微妙に変わる。長野県では「ふきったま」と呼ぶそうだ。

ふきのとうは、古くは縄文時代から食されており、平安時代には栽培もされていた。927年の書物には“3年に1回植え替えの必要がある”との記述がある。日本最古の和歌集である万葉集にも、春にふきのとうを採る様子を詠んだ歌が収められている。

春山の 咲きのををりに 春菜摘む 妹が白紐 見らくしよしも

春菜は、わらび・せり・かたくり・ふきのとうなどのことで、「春山の花が咲いている下で春の菜を摘んでいる乙女の白い紐を見られるのはなんとも良いものだ」というような意味だ。

中国の民間療法では、ふきのとうの解毒作用を活かし、蜂に刺されたときや蛇に噛まれた際の治療に使う。朝鮮では、まだ小さい葉や茎を収穫し、ご飯を包んで食べたり、和え物にしたりする。冬眠から目覚めた熊が最初に食べるのもふきのとうだといわれるが、これは春野菜の苦みやえぐみで、なまった体を目覚めさせ、冬に溜め込んだ毒素を排出する目的がある。

ふきのとうの苦みのもとには、アルカロイドやケンフェール、咳止めや花粉症予防効果のあるフキノール酸など、様々な成分が含まれる。健康増進に役立ちそうだが、成分のひとつ、ピロリジジンアルカロイドは肝臓に対して毒性を持っているので、食べる前にはきちんとあく抜きをすること。

なお、ハシリドコロという植物をふきのとうと間違え、食中毒を起こす例が報告されている。不安な時は山人(山の達人)とまではいかなくとも、詳しい人に聞くことをお勧めする。

待ちに待った春の味覚、自然の恵みは昔ながらのばっけ味噌や天ぷらはもちろんおいしいが、一工夫して新たな料理にも挑戦してみたい。

佐藤 友代
岩手県紫波町出身。西和賀に住んで2年目。好きな季節は夏。
旅の楽しみは食べ物。動物がいると気をとられる。

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