春の皿には苦みを盛れ

日当たりのよい斜面では雪がすがたを消し、薄黄緑色のばっけが次々と咲きはじめる。がくが開き、我先にと競うように早い春を告げる。

ばっけをご存知でない方は、春を告げるものと聞いて、何を思い浮かべるだろう。ばっけは主に東北で使われる方言で、ふきのとうのことである。調べてみると、アイヌ語で“子供を背負う”という意味の「パッカイ」や“春”を意味する「タイギャ」という言葉が変化したなど諸説あって、同じ岩手県内でも「ばっけ」や「ばっきゃ」と呼ぶなど、地域が異なると呼び名も微妙に変わる。長野県では「ふきったま」と呼ぶそうだ。 つづきを読む “春の皿には苦みを盛れ”

月の輪をめぐる冒険

建物内に一歩足を踏み入れると、そこには日本酒の香りと、脈々と受け継がれてきた歴史が漂っていた。蔵内は天井近くの窓から入り込んだ午後の暖かな光に包まれているが、作業場は霜が降りたように、研ぎ澄まされた冬の空気で満たされている。蔵人たちはその張りつめた空気を裂いて素早く動き回り、淡々と作業を進めていく。 つづきを読む “月の輪をめぐる冒険”