藤沢周平から読み解く「雪あかり」

 坂を見おろしていると、そこで四年ぶりに由乃と会ったときのことが思い出された。そのとき雪に滑って、屈託なく笑った由乃の声が甦えるようだった。すると雪の坂道は、不意に寂寥に満ちた場所にみえた。胸の波立ちはおさまり、かわりに由乃の不在が、鋭く胸をしめつけてくるのを、菊四郎は感じた。
(藤沢周平『新装版 雪明かり』 講談社文庫・本文p.437より)

ここが境界線である。世間からの非難と侮蔑を甘んじて受け、血のつながりがない妹・由乃と夫婦になるのか。それともお家同士の取り決めにしたがい、許嫁(いいなずけ)との婚儀の日を待つのか。どんな時代であろうと、人生はいろんな方法で決断をせまる。 つづきを読む “藤沢周平から読み解く「雪あかり」”

電柱のアネクドート

足もとに突き立てたスノーダンプの先端が、バキッという音をあげて割れた。まさか、と思いながら雪面に触れてみる。圧雪された上に気温が低下して、氷になっていた部分だった。ちゃんと確認しておけばよかった。

こわれた破片を拾いあげ、家の前でしばし立ち尽くす。先が思いやられた。今年の冬は、まだはじまったばかりだというのに。 つづきを読む “電柱のアネクドート”